バッチ式洗浄機の構成と仕組み
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①バッチ式洗浄機の装置構成、バッチ洗浄とは?
1槽に複数のワークを投入し洗浄することを弊社ではバッチ洗浄と呼んでいます。バッチ式洗浄機では、洗浄室と水切り室を兼用しています。同じ部屋の中で洗浄対象ワークに対してスプレー洗浄とエアブローを行います。洗浄タンクではフィルターを使用してゴミを除去し、また洗浄水として再利用しています。油分の多いお客様の場合はオイルスキマーや油水分離装置を取り付け、液の浄化を図ります。より高い洗浄性を求められるお客様の場合は、タンクをダーティー・クリーンの2槽式に分けることで液のろ過精度を向上させることが可能です。
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②バッチ式洗浄機の納入事例とその用途
試験機や、中間工程での簡易洗浄としてご使用いただく事例が多い工業用洗浄機です。後工程でまた切削等の加工があり、簡易的に切粉を除去したい、という工程や、要求品質が厳しくないため、外観的に汚れが落とせれば良いというお客様に向いています。なかにはインラインで使用されるお客様もあり、ガントリーローダーなどを設置して前後工程の加工機とつなぎ、全自動でラインとして運用されている事例もあります。インターフェース信号を接続し、ローダーと通信しながら稼働することも可能です。
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③バッチ式洗浄機における乾燥についての考え方
洗浄室の中にコンプレッサーエアーによる水切り装置を備えています。ただ、洗浄室と同じ室内のため簡易的な水切りにとどまります。エアブローの時間を長く設定すれば、水切り効果を上げることもできますが、ワーク取り出し後、手動でハンドガン水切りをするほうが実用的です。ワークの形状等によっては、別設備として、水切り乾燥装置を設置し、対象ワークを乾燥させることも効果的です。スプレーと水切りの部屋を分けることにより、高い水切り性能を発揮することができます。
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④バッチ洗浄における油水分離の考え方とその方法
バッチ式洗浄機では洗浄液が入るタンクの容量が一般的には200L程度と少ないことが多く汚れたら全量液交換するという考え方が取られる場合もあります。タンクの浮上油が回収できれば良いというニーズに対しては、小型の油分分離装置をご提案しております。弊社ではステンレスベルトを使用したオイルスキマーを設計製作し、タンク上に設置しています。バッチ式洗浄ではタンクがひとつであり洗浄液が劣化するのも早いため、油水分離装置の選定と定期的な液交換はセットで検討する必要があります。
バッチ式洗浄機の種類と用途
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①バッチ式洗浄機を使用するメリット・デメリット
設置スペースが小さく、コストが安いことがバッチ式洗浄機のメリットです。洗浄室と水切り室を兼用し、液のろ過装置も最小限の構成を選ぶことで、コンパクトな洗浄工程を作ることができます。また、投入・取り出し口が同じなので、手動の持ち回りラインを作る場合も工程が組みやすくなります。残留油分やコンタミネーションの規格が厳しい洗浄対象ワークについては多槽式で洗浄する必要があり、バッチ式洗浄機では対応することができません。水切り工程が洗浄室内にあることも、デメリットになります。乾燥性を求める場合には別工程で検討するなど、配慮が必要となります。
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②バッチ式洗浄機の種類とその使い勝手
ワークが重量物であったり、ワークの脱着がロボット等でなされる場合、脱着ステーションが必要となるため、ワークをセットするテーブルは洗浄機から手前に引き出されたほうが便利です。また、人が持ち回り作業でワーク脱着を繰り返す場合、テーブルは引き出さずその場でシャッターが閉まるタイプのほうがタクトも短くなり設置スペースの削減にも繋がります。バッチ洗浄で水切り性を強化したい場合は洗浄室と水切り室を分け、投入取り出しと合わせて3ステーション構造の洗浄機をご提案することも可能です。奥の部屋で洗浄、手前の部屋で水切り、ワーク払い出しという流れです。
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③バッチ式洗浄機と使用する洗浄剤について
洗浄液として、水を電気分解して得られるアルカリ性電解イオン水を使用する場合と、アルカリ洗剤などの洗浄剤を使用する場合があります。洗浄剤を使用する場合、その選定には注意が必要です。大きく分けて、浸漬洗浄用と、スプレー洗浄用の洗浄剤があり浸漬洗浄用の場合、その多くが発泡性を有しています。浸漬洗浄で使用するには問題ありませんが、バッチ式洗浄機で使用すると発泡の影響で装置が誤作動を起こすため、使用することができません。スプレー式の洗浄機を使用する場合には、スプレー洗浄用の洗浄剤を選ぶ必要があります。